2023.06.30 重要 司法試験と進路

【受験生への応援メッセージ⑤ 齋藤実先生】

【受験生への応援メッセージ⑤ 齋藤実先生】
 いろいろな気持ちで、司法試験前の時間を過ごしていると思います。私は、ただただ不安な気持ちでした。私も「気が付いたら、司法試験が終わっていたらどんなに良いだろう。」と真剣に何度も思い、試験前は歯が痛く、微熱があるような気がしました。ついに試験前日は緊張のあまり一睡もできませんでした。
 ただ、合格後、このような思いで司法試験に臨んだ人は、私一人ではありませんでした。むしろ、このような思いだった合格者は多数派だったと思います。

 まずは、司法試験を受験できるところまで来た自分に自信を持ってください。法科大学院の入学準備をし、法科大学院で学び、司法試験の勉強をし、試験場にたどり着くまでの過程がどれほど長かったか。人生をかけた時間を過ごしてきたはずです。また、自分の努力とともに、周りの支えてくれた方々がいらして初めてこの場にたどり着いたはずです。そして、同じような夢を持ちながら、残念ながらここまで来られなかった人は本当に多くいます。その人たちの分も司法試験に臨んできてください。
 もう一つ考えていただきたいのは、今、人生最高のチャンスが目の前にあることです。司法試験はプレッシャーの場かもしれませんが、チャンス、しかも人生最高のチャンスを与えてくれる場でもあります。司法試験合格後の人生には様々な可能性があります。プレッシャーに押しつぶされそうになったら、今、大きな晴れ舞台に立っていることを噛みしめて下さい。

 さて、試験が始まったら、まず設問を3回読みましょう。多くの答案が設問に答え切れておらず、取れる点を落としています。設問の読み方で、点数は大きく変わります。「設問に答える」。司法試験で問われている究極はこれです。司法試験で受かるのは、自分が用意してきた論点を書く人ではありません。設問に素直に答える人です。設問をオウム返しにして答えることを心がけるだけでも、点数が必ず上がります。
 次に、問題文を重要と思う箇所には印をしながら読み進めてください。答案構成をする前に、問題文は少なくとも2回は読みたいところです。その上で、答案構成に入ります。答案構成は勝手にせず、設問に沿って答案構成をすることがコツです。当然ですが、忘れがちなのは、その事例を解くために必要な条文をあげることです。そして、条文をあげたら条文を要件に分解し、要件を提示してください。要件の中で、必要な定義や規範があれば、それをできる限り正確に書いて。この際に、論点があるのであれば、論点を書くと良いでしょう。最後は、あてはめです。要件に対応してあてはめてください。せっかくあげた定義や規範のキーワードは正確にあてはめに書き入れてください。定義や規範とあてはめが対応していることこそ、採点者が見たい重要なポイントです。答案構成が終わったら、もう一度、ざっと問題文を読むと良いでしょう。ここで落としている事実がないか、再確認して下さい。事実を1つ拾えば、1点は上がります。
 さて、書き始めますが、その前に残り時間を確認してください。この残り時間であれば何ページ書けるか計算してください。次に、答案構成から、だいたい何ページかかる答案かを予測してください。残り時間内にかけるページ数であれば問題ありません。残り時間で書けない場合には、慌てずに。答案構成全体のボリュームを圧縮してください。ただ、答案構成であげた項目は落とさずに。せっかくあげた項目の点数を落とすことになります。あとは一気に書き上げます。

 最後に、短答が大の苦手だった私から、短答突破のコツを一言。「出来ると思った問題を全て正解する」に尽きます。出来ると思える問題がいくら少なくても構いません。出来ると思った問題を全て確実に取ってください。少しでも時間が余ったら、出来たと思った問題を見直してください。見直せば点数は上がり、合格の可能性は飛躍的に上がります。

 私は、試験場でガタガタと震えながらも、「負けたくなかったら強くなる」と思っていました。皆さんが試験場で心の強さが少しでも出せることをお祈りしています。
 誰のためではなく、ただ自分のために、自分の人生を切り開いてください。